顧客の要望を「あえて断る」交渉術 本当に満足できる交渉着地点とは

  • 2018.4.18
  • 部下に対して使える
    上司に対して使える
    顧客に対して使える

 

突然ですが、あなたは値下げ交渉をしたことはありますか?
物件、車、家電などの購入時やビジネスの取引など、値下げ交渉を行うシーンは意外と日常生活に溢れています。

そして値下げ交渉をしたことがある人は、相手が譲歩してきた時にABどちらかの気持ちになったと思います。

 

A:「やった!希望した金額まで値下げできた!」
B:「あれ?すんなり通ったな…もう少し粘ればもっと値下げできたかも…」

 

Aは言わずもがな交渉成立に満足しています。
しかしBは、要望が通ったにも関わらず不満が残る結果となっています。

 

この2つの違いは何なのか?
実は相手が譲歩しているという点では同じなのですが、その譲歩に至るまでのやり取りによって変化が生じているのです。
ではなぜ、このような変化が起きるのか?また、どうすれば不満の無い交渉ができるのか?詳しくご紹介していきます。

 

 

例えば、あなたは家電量販店で10万円のテレビを購入したい。でも10万円以下に値下げできないか想定しているとします。そして店員を呼んで値下げ交渉をしてみました。

 

【Case1】

あなた:「このテレビ、9万円に値下げしてよ。」

店員:「はい、よろしいですよ。」

あなた:「あれ?すんなり通った…こんなことなら思い切って8万円って言えばよかったな…」

 

このように、交渉に挑んだら即答で承諾されてしまった場合、先述のBパターンと同じ気持ちになります。
ここからさらに、「やっぱり8万円まで下げてよ。」と言える強者もいますが、大抵はここで引き下がってしまうでしょう。そうすると想定通りの金額で購入できたにも関わらず、僅かな不満が残ります。

 

【Case2】

あなた:「このテレビ、9万円に値下げしてよ。」

店員:「すみませんが、こちらは最新モデルですので95,000円までしかお値下げできません。」

あなた:「うーん、もう少しだけ勉強できないかな?」

店員:「承知しました。では今回特別に9万円にさせていただきます。」

 

このように言われた場合はどうでしょう。
一度目は断る意思を示されていますが、粘った結果二度目で要望が通りました。

そうするとあなたは、「やった!9万円まで下がった!」と思うのではないでしょうか?先述のAパターンの気持ちですね。

その後あなたは交渉に勝った気分でテレビを購入しますが、実は店員は値下げ交渉されることを予想し、最初から9万円で販売する手筈だったのです。

 

つまりCase2は、交渉結果に満足している顧客と、売りたい価格で販売できた店員というWin-Winの図式が成り立っています。
対してCase1では、双方の要望が叶っているのに顧客だけ不満や後悔といった気持ちが生じています。

 

このような、交渉に勝ったのに悔やむ気持ちが生じてしまう状況のことを、心理学では『勝者の呪縛』と呼んでいます。
上記2つのケースを見て分かる通り、お互いが満足できる結果になった方が断然良いですし、交渉に勝った(と思っている)顧客はリピーターになってくれるかもしれません。

 

そのため交渉される側は当初、あえて断る意思や検討する素振りを見せ、その後要望を飲んで承諾したというように演出すれば、相手は真の満足感を得られ信頼を置くようになります。

 

 

尚、『勝者の呪縛』は日常だけでなく、あらゆるビジネスシーンに応用することもできます。
例えば営業マンが取引先と商談する時も、相手の要望を素直に受け入れるのではなく、「一旦持ち帰って上司と相談します。」などの素振りを見せながら交渉し、その後「その条件でお引き受けいたします。」と伝えます。
そうすれば、相手は条件が通ったという気持ちに追随して、その会社に信頼感を抱くようになります。

 

断るのが苦手な人は、そのまま要望を受け入れた方がいいと思うかもしれませんが、それだと却って拍子抜けされたり、モヤモヤした感情を抱かれたりするのです。
相手も人間ですので、一回で交渉が上手く行くと「もっと条件を出せばよかった。」と欲が出てしまうわけです。
そのため交渉が苦手な営業マンは一度、断ることを前提において駆け引きしてみると良いでしょう。

 

 

また、『勝者の呪縛』は顧客に対する心理テクニックだけでなく、上司が部下をマネジメントする時にも応用できます。
例えば上司が部下に対して使う場合、このようなシーンを想定します。

 

部下:「来月の目標は新規案件を10件獲得することです。」

 

通常ならばここで、「では目標に向けて頑張りなさい。」と声をかけるでしょうが、そのまま話が終わってしまうと部下からすれば何の張り合いもありません。
しかし、『勝者の呪縛』の心理を利用してやり取りした場合はこのようになります。

 

部下:「来月の目標は新規案件を10件獲得することです。」

上司:「でも今までのやり方だと目標達成できないんじゃないか?」

 

先ほどとは違い、今度は否定的な意見を挟んでいます。
そうすると当然、なぜ10件という数字を目標にしたか、獲得できる理由などを反論してくるでしょう。
そしてそれを聞いた後、「では目標に向けて頑張りなさい。」と声をかければ、部下は反論した手前、目標達成に向けて精一杯取り組むことになりますし、達成した後は喜びも大きくなるでしょう。

 

このように、発言に対して一度否定的な意見を挟むと、部下はまるで断る意思を示されたかのような錯覚に陥ります。
そこからやり取りを行い最後に肯定的な態度を示すと、最終的に自分の考えに合意してくれたと認識し、初めから肯定される場合よりもモチベーションや達成感が増します。

 

ですが、あまり強く否定するとパワハラのようになり、逆にモチベーションを下げてしまう可能性があるので注意が必要です。
あくまで焦らすような態度で接し、向こうから意見を述べてくるように誘導しましょう。
そうすればモチベーションだけでなく、お互いのコミュニケーション力も向上して一石二鳥です。

 

交渉術はどちらか一方が譲歩するのではなく、お互いが満足した気持ちになって初めて効果を発揮します。
そのためには何でもYESで応えるのではなく、時にはNOを突きつけて相手の感情を揺さぶることも重要です。
そうやって対等な立場から意見を交え、駆け引きを行うことによって真の満足感は生まれるのです。