セールストークにもデートの誘いにも使える「ダブルバインド」交渉術

  • 2018.7.31
  • 顧客に対して使える
    日常・生活

皆さんは、ビジネスや私生活の場で人に何かを提案するとき、どのように切り出しているでしょうか?

 

「当社の新サービスを導入しませんか」
「今度の日曜、遊びに行かない?」

 

などと、普通に「イエス/ノー」で答えられる尋ね方をするだけでは、なかなか望んだ反応が得られないことも多いものです。提案される側の立場になって考えてみればよくわかりますが、興味のないサービスを紹介されても「要りません」と答えるだけですし、積極的に仲良くしたいと思っていない人から漠然と「遊びに行かない?」と誘われても気乗りはしませんよね。

では、どんな提案の仕方なら人の心を動かすことができるのか。ここでは、交渉上手な人がよく使っている「ダブルバインド」というテクニックを紹介しましょう。

この「ダブルバインド」というテクニックは、単に「○○をしませんか?」と提案するのではなく、「AとBだったらどちらがいいですか?」と二つの選択肢を提示し、相手に選択を促すというものです。先程の例に当てはめると、

 

「サービスAとサービスBがありますが、どちらになさいますか?」
「今度の日曜、映画に行くのと遊園地に行くのとどっちがいい?」

 

といった具合です。
こうした問いかけを行うことで、相手の心理状態を、イエスかノーかの二者択一のマインドから、二つの選択肢からの選択のマインドにすり替えることができます。「どちらがいいですか?」と問われると、相手の脳裏から「却下」という選択肢は消え、どちらかを選んでもらいやすくなるのです。

これは、専門用語では「誤前提暗示(ごぜんていあんじ)」と呼ばれる手法であり、二つの選択肢を相手に突きつけることで、「どちらも選ばないという選択肢はない」という誤った前提を相手に刷り込んでしまうという交渉テクニックなのです。

ダブルバインドの手法を用いる際には、どちらが選ばれても提案者の利益になるように選択肢を考えなければなりません。
例えば、こんな尋ね方をする人はまずいないと思いますが、

 

「弊社のサービスと、競合のX社のサービス、どちらがいいと思いますか?」

 

というような聞き方では、「じゃあX社の方がいいや」となった際に困ってしまいますよね。相手がどちらを選んだとしても自分が得をするように質問を構成しなければ、ダブルバインドにはなりません。

 

また、真に生産的な交渉とは、相手のマイナスが自分のプラスになる「分配型交渉」ではなく、相手と自分の双方にプラスの価値を生み出せるような「統合型交渉」であるべきです。いわゆる「Win-Win」というやつですね。この観点から言うと、相手に不利益を押し付けるような選択肢の提示が望ましくないのは言うまでもありません。「コーランか剣か」(改宗しなければ血が流れることになる)というような選択肢の提示は、確かにダブルバインドではあっても、そもそも有意義な交渉とは言えないのです。

 

「今度の日曜、映画に行くのと遊園地に行くのとどっちがいい?」

 

といった誘いであれば、相手はどちらの選択肢にも魅力を感じてくれる可能性がありますが、これがもし、スポーツに全く興味のない相手に、

 

「今度の日曜、野球観戦に行くのとサッカー観戦に行くのとどっちがいい?」

 

と尋ねたのだったとしたら、「どちらも興味ありません」と嫌な顔をされてしまうかもしれません。
どんな選択肢なら相手の利益になるのかを考えなければ、良い交渉は生まれないことがわかりますね。

どんなテクニックでもそうですが、攻めの手段を知るということは、同時に、同じ手段で攻めてくる相手に対する守りの手段をも知れるということでもあります。

 

こうしてダブルバインドという交渉テクニックを知った皆さんは、逆に相手からダブルバインドを仕掛けられた際に、その真意を見破ることができるでしょう。相手から二つの選択肢を提示されて「どちらがいい?」と聞かれたら、それは二つとも相手に利益をもたらす選択なのだと看破することができます。

 

それが自分にとっても利益になる「Win-Win」の形になっているのならいいのですが、訪問セールスや勧誘など、往々にして、自分の側にメリットのない取引のゴリ押しを相手が仕掛けてくることはありえます。そんなとき、今回学んだダブルバインドに関する知識が皆さんを救ってくれるかもしれません。

 

相手から複数の選択肢で迫られたら、冷静に一歩引いて状況を把握し、相手の提示する選択肢を選ぶ以外にも道があるのではないか?と考えてみることが大切です。相手の仕掛けてきたダブルバインドの罠から脱すれば、「どちらも選ばない」という結論に無事至ることができるわけです。